COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
会計を済ませ本屋を出る。
『このあと、どうしますか?』
心のどこかで予感していた言葉。
その聞き方がまるで解散を促すように聞こえてしまう。
でもこのあとの約束も特にしていないのに、これ以上彼の時間を縛るのも申し訳なく感じていた。
もしかすると、一緒にいたいと思っているのは私だけなのかも。
メッセージの件もそう。
これではまるで高校生の恋愛だと称されてしまいそうだ。
「…こうして本を買うと、すぐに読みたくなっちゃいますね」
せめてスムーズに解散を切り出せるように、と心にもないそんな言葉が口をついていた。
『…もしよかったら、家に来ますか?
ここから近いので』
思いもよらないその提案に驚いたが、同時に嬉しさがこみ上げる。
「い、行きます…!」
本の入った袋を握りしめる手に力が入る。
『相変わらず自覚はなさそうですね。
そんな顔しちゃって』
私の顔をじっと見て、室長はニコリと笑った。
そう言えば、前にもそんなことを言っていた。
けれど、その時はまだ一緒にいられる、そのことが何より嬉しくて
その言葉の意味を追求することはしなかった。