COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
『おい、何してる』
聞き覚えのある声に振り返ると、そこには有松さんが立っていた。
別に悪いことをしているわけでもないのに、相変わらずの迫力に私でさえもたじろぐ。
『あ、いえ…大丈夫です。
プライベートなことなので』
そんな迫力に押されることもなく 飄々と返事をする彼を、驚きのあまり勢いよく振り返る。
小本君は振り返った私に、ね?と同意を求めた。
『そうか』
有松さんの声が彼に向けて返事をする。
…そうか、ってそれだけ?
有松さんにとっては今この状況がそれで済んじゃうことなんだ。
何とも思っていないようなその返事に、心がぎゅっと掴まれるような痛みが走る。
その痛みを誤魔化すように下唇を噛んだ。