COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
彼の歩くスピードに合わせようとするが、
上手くいかずおぼつかない足取りで必死に着いていく。
何が起こっているのかようやく頭が把握し始めた頃、
有松さんは非常階段の扉に手を掛けると、勢いよく扉を開いた。
非常階段の踊り場に出ると、扉が閉まる音が静まり返った空間に響く。
目の前には押し黙ったままの有松さん。
沈黙にいたたまれなくなり、口を開く。
「…ずっと、聞いてたんですか?」
私の声が静かな空間にポツリと落ちた。
「それにあんなことして…噂になりますよ、もう」
頭を必死で回転させて言葉を絞り出すが、伝えたい気持ちが上手く形にならない。
ダメだ。
こんなことが言いたいんじゃない。