COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
顔を上げると、こちらをまっすぐ射貫くように睨みつける目。
『…どうしてはっきりと断らない』
『それとも俺は邪魔だったか?』
彼は、私を壁に追いやるようにに詰め寄った。
背中に感じるひんやりとした壁の感触が、もう逃げ場がないことを示していた。
『日比野』
まるで返事を催促するように、私を呼ぶ声が真上から降ってくる。
どうしてこんなに一方的に言われなきゃいけないの?
自分の都合ばかり押し付けて。
意を決すると、勢いよく顔を上げる。
「…会社の中で波風立てたくないんですってば!
平和に仕事したいって思うのがそんなにダメですか!?」
至近距離で目が合う。
『じゃあお前はあの男が勝手に諦めてくれるのを待つだけなんだな?
それまで何もせずに耐えるんだな?』
「それは…」
言い返す言葉もない。
有松さんの言い分は最も正論であることはわかっている。