COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―

あの日も、いつも通りベンチに腰かけて書類に目を通していた。


『あーー!!解放感ーー!!』

扉が閉まる音と共に、騒がしい声がバルコニーに入ってきた。

するとその声の主であろうおぼしき話し声が目の前を通り過ぎる。

書類から顔を上げると、女性の二人組が
バルコニーの 手摺(てすり)にもたれかかるようにして休憩を始めた。


騒がしいのは苦手だ。
けれど共有のスペースなので、文句を言うのなんてもっての外だ。

どうやら今日はゆっくり休憩ができなさそうだ。

でも今更どこかへ移動するのも面倒なので、今日だけは辛抱することにする。

再び書類に目を落とすが、二人の会話は嫌でも耳に入ってきた。


『ねぇねぇ優香先輩、あれ見て』

『…病院。ここからだと裏口丸見えだね』


『実は私、人間観察が得意なんですよぉ!』

先程の騒がしい声の主が、得意げに言う。
こういうパターンの奴の人間観察は、だいたい的外れなことが多い。
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