COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
人事部に配属されてからというもの、人を見抜く力は相当鍛えられた。
外面だけ取り繕うのが天才的に上手い奴もいれば、
体育会系によくある情熱とテンションだけで押し切ろうとする奴もいる。
文章や口では何とでも言える。
それよりも、相手のちょっとした動きや言葉の言い回しひとつひとつを吟味して
正確に相手の人間性を把握していかなければならない。
人間性と言っても、やはり採用関係や人事異動が関わる仕事では美点よりも欠点が重要視される場面が多い。
いかにすばやく正確に欠点を見つけ出すか、いつもそれに重きを置くようにしている。
もちろんそんなこと、俺だってしたわけがない。
けれどそれが俺の仕事で、俺の適性だ。
そんな呑気に人間観察が得意などとのたまう人間は第一に嫌いな人種だ。
俺は苛立ちの意味を込めて、その背中を盗み見た。