COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―

『次はあの人!』

そうして彼女は次々と行き交う人を指名しては、その人間観察とやらを繰り広げる。

でもそのひとつひとつの人間観察を聞いていると、何故か毒気が抜かれていくような
どこか温かい気持ちになるようなそんな不思議な気持ちになる。


『すっごい気難しそうなのに、実はすっごく心が温かい人で

胸キュンするセリフとかもさらっと言っちゃう!奥さんはそのギャップに実はメロメロなの!』

堪え切れなくなったのか、隣に並ぶ女性が笑い出す。

『理央、ほんとバカ…っ』


理央。

それが彼女の名前だった。

その後も彼女は明るい声で見ず知らずの人の温かい物語を紡いだ。

彼女はきっといつもそうして自分の物語の苦しくて辛い出来事も幸せなものに書き換えていくのだろう。


俺はいつの間にか”理央”の背中から目が離せなくなっていた。
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