COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
するとそこには
腕組みをして壁にもたれている彼の姿があった。
彼はまっすぐ前を見据えている。
「伏屋室長…」
声に反応するようにこちらを向いた彼は、突き放すような冷たい視線を私へ向けた。
そこにいつもの優しい笑顔はない。
『…午後から会議なので、お願いしますね』
そう言って彼は私の横を足早に通り過ぎていった。
もしかすると、さっきのやりとりを見られたのかもしれない。
だとすると、きっと彼は誤解をしている。
けれど彼の冷たい態度に、
ショックのあまり声を出すことも動くこともできなかった。
室長が会議を終えて、オフィスへ戻ってきたのは終業間際。
席に着いた室長はいつも通りの優しい笑顔に戻っていた。
まるで先程のことが夢だったかのように思えるほど。
終業のベルが鳴ると、皆がいつも通り帰り支度を始める。
そんな中、室長は未だデスクでPCへと向かっていた。