COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
『生ハムだー!!!!!』
入り口を入ってすぐのカウンターの上には大きな生ハムの塊が置いてあり、
理央ちゃんはそれを見るや否や歓喜の声をあげた。
食堂風のおしゃれな内観にカウンターに所狭しと並べられたお酒。
カウンターの上に貼られた手書きの黒板や暖色系の照明がとても温かみを感じる。
人気店なのだろうか、平日の夜だというのに
仕事帰りのサラリーマンやOL、大学生でとても賑わっていてこれぞまさにスペインバルといった雰囲気だ。
カウンターの前を通り過ぎると、四人掛けのテーブルへ案内される。
メニュー表を開くと、そこには見慣れない名前のメニューが広がっていた。
けれどよく見るとその下に小さな文字で説明が付け加えられている。
『パエリア皆で分けようよー!』
昭香さんがお店の賑わいに負けない声で写真を指差しながら言う。
理央ちゃんはすぐさまその提案に賛成の声をあげた。
『花緒先輩は何か食べたいものありますか?』
正面に座った優香ちゃんがメニュー表を回転させて、私の方へ差し出す。