COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
昭香さんが店員にオーダーを告げると、
それぞれスマートフォンを触ったり、店内を見回したりと自由な時間を過ごす。
『わぁー崩れてる!私ちょっと化粧直してきますー』
手鏡を覗き込んでいた理央ちゃんは、そう言うとすぐさま席を立った。
『ちょっと私もトイレ行ってきます』
その後を追うように優香ちゃんも席を立つ。
黒板に書かれたメニューを眺める。
その時ふと視線を感じて、斜め前に座った昭香さんを見た。
『花緒、基くんにメール打っときな』
「え…」
返す言葉を探していると、彼女は更に続けた。
『会いに行ってきなって。その為にこの店選んだんだから』
「昭香さん…知ってるんですか?」
室長はもちろん昭香さんにとっても直属の上司である。
そんな事情もあり、私達が付き合い始めたことは昭香さんにさえも話していなかった。