COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
机の隅で振動したスマートフォンを手に取る。
返事の内容は挨拶と、家に着いたということが書いてある簡潔なものだった。
無機質なその文字を眺めていると、また先程の冷たい視線が脳裏によぎる。
それを思い出すと、喉の奥から這い上がるような不安に襲われた。
『花緒?』
私を呼ぶ声にはっと顔を上げると、昭香さんと目が合う。
『大丈夫?…急用なら行っておいで!
お金は建て替えとくからさ!』
「でも…」
『行った方がいいです』
私の言葉に被せるように優香ちゃんが言うと、理央ちゃんもそれに同意するように頷いた。
「はい…皆付き合ってくれたのにごめんなさい、ありがとう!」
そう皆へお礼と伝えると皆の言葉に背中を押されるように店を出た。
店を出て少し歩くと、手にしたスマートフォンが振動する。
《大丈夫!がんばれ!》
ポップアップでそのメッセージを確認すると、踏み出す足に力を入れた。