COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
-Strawberry-
駅の外に出ると、目の前に現れたその建物は昼に見るのとは少し表情が違った。
葵堂書店と書かれた文字はスポットライトで照らされ、ガラスの大きな窓からは白い光が漏れている。
スマートフォンを取り出し、画面を点けると一度深呼吸をした。
彼の名前に触れて、それを耳に当てるとすぐにコール音が鳴る。
無機質なコール音に、心臓の鼓動はどんどん早くなっていく。
「お願い、出て…」
その音を聞いていると、
コール音が一生途絶えることがないような気さえしてくる。
するとその時、コール音が途切れた。
『…もしもし』
電話の向こうから聞こえた声に胸が高鳴る。
「あ、あの…こんばんは」
『こんばんは…
……今どこにいるんですか?』
駅前の喧騒が電話越しに伝わってしまったのだろうか、電話口の向こうの彼の声のトーンが少し低くなる。