COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―

プシュ。

炭酸水を開けると、音と共にペットボトルから漏れた空気が手に触った。
それを乾いた喉に流し込むと、ギュウっと喉が絞めつけられる感覚が心地いい。

「っはー。」

ペットボトルから口を離すと濡れた毛先から水滴がぽたりと落ちた。
視線を前に向けるとガラスに映る自分が目に入る。

肩につくくらいの黒髪のボブ。

――――8ヶ月前、彼と別れた。

失恋をしてショートカットにする女の気持ちを初めて知った。

生まれて初めて、それくらい人を好きになった。
壊れるくらい、好きだった。


『優香、ずっと一緒にいてくれる?』

『俺を信じてよ…愛してるんだ』

懐かしい声を思い出す。
今でも耳に残っている声。

そしてこうして思い出すときには、いつも最後に聞こえてくる。
< 23 / 449 >

この作品をシェア

pagetop