COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
『ごめん、やっぱり別れられないんだ…
あいつ子供ができたって』
彼には家庭があった。
それをわかっていて好きになった。
思い出は美しくなんてない。
嘘ばっかりだった。
全部、嘘だった。
家庭がある人を好きになって関係をもってしまった自分。
この人と一緒に、ずっと歩いて行けると信じていた自分。
誰よりも愛されていると勘違いしていた自分。
そして、今でも彼の声に支配されている自分。
鼻にツンとした感覚が走って、ガラスから視線を外す。
こんな愚かで汚い自分に叫び出しそうになる。
その時、少しぼやけた視界にテーブルの上の紙袋が入る。
“『ちゃんと食べてますか?』”
思い出したように、手首を見つめる。
「食べるか…」
その声を思い出すと、じわっと心が温かくなった気がした。
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*CAFE AU LAIT