COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
『…俺の気持ちを知ってて、どうしてここに来たんだよ』
いつもより強い力で抱き締められた肩に
かかる圧がじわじわと痛みに変わっていく。
彼の痛みに比べたら、こんなの痛くなんてない。
きっと彼の心はこれの何倍も痛いはずだから。
その腕に、その香りに彼と過ごした思い出がよみがえる。
いつだって私を優しく抱きしめてくれた力強い腕。
けれど私が抱き締め返すことはもうできない。
行き場のない腕にぐっと力を込める。
『俺のこと…好きじゃなくてもいい』
そううなされるように呟いた彼の言葉の端が少しだけ歪む。
なだめるように彼の名を呼ぶと、
彼は私の首筋に顔を埋めるように抱き締めた腕により一層力を込めた。
『嫌だ…離したくない』
懇願するような切ない声に、こみ上げた涙をぐっと堪える。