COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
「家…です」
ふと目の前の写真が目に入る。
私は何をしているんだろう。
『そっか!よかった…。何かあったのかと思いました!』
彼の心底ほっとしたような声に、後ろめたさが募っていく。
「ごめんね…今から行くから」
『…はい、気を付けてくださいね』
彼の穏やかな声が胸に沁みていくようにじわりと広がる。
電話を切り、目の前に散らかった思い出達から
目を背けるように立ち上がると私は部屋を出た。
その店の前に差し掛かると、いつかのように店のライトは消えていた。
立ち止まってそれを見上げる。
その光景はいつ見てもどこか寂しげで、胸にくるものがある。
その時、入り口の横にある勝手口が開いた。
『本郷さん!』
彼は私の顔を見ると、
いつものよう明るく笑った。
「…春田くん」
ふう、と息をひとつ吐き出し、彼に歩み寄る。
大丈夫。今日もいつも通りにできる。