COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
その確信は悔しくも直後に崩れ落ちた。
『…本郷さん?』
その声に彼を見上げると、彼の顔が目の前に
あるはずだった。
けれど目に映ったそれはまるで、すりガラスの向こう側にいるような
恐らく彼であろう輪郭がぼやりと見えるだけだった。
ぼろぼろとまた頬に触れたそれが
涙だと気付くと、踵を返そうと咄嗟に体を動かした。
『待って!!!』
その瞬間、進行方向を塞ぐように彼の腕が伸びてきた。
まるで抱き止めるような形で、私の肩に彼の掌が触れる。
『…おかしいと思ってたんだ』
いつもとは違う、真剣な彼の声。
彼の顔を見上げるが
ぼやけた視界の中、彼の表情は読めない。
移動した彼の手が私の手首を掴むと、扉の中へ引き入れるようにその手を引いた。