COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
平静を装おうとするが、それに反して速くなる鼓動。
手が震えそうになるのを抑えて画面に触れると、メッセージが表示された。
《優香、会いたい》
カタン、と音を立てて、手から滑り落ちたスマートフォンが床に落ちる。
『優香』
私の名を呼ぶ声は目の前にいる彼から発せられたものではない。
マズイ。そう感じた時にはもうすでに遅かった。
再び歪み始める視界。
息が、できない。
どうにか息をしようとするが、どんどん荒くなる呼吸がそれをさらに邪魔した。
『本郷さんっ!!!』
春田くんの声がキッチンに響くと、
床にしゃがみ込むように崩れ落ちた私を大きな手が受け止めた。
反射的に見上げると、至近距離、目が合った彼は切なげに顔をしかめた。