COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
彼は腕の力を緩めると、私の顔を覗き込むようにして言った。
『俺…本郷さんのことが、好きです』
その真剣な眼差しが、まっすぐに私を捕らえた。
『…ずっと気になってました。
たまにする悲しい顔も、切なそうな顔も。
誰が本郷さんにこんな悲しい表情をさせてるんだろうって。
そんな人やめて、俺にしたらいいって…』
彼は視線を逸らすと、その顔はみるみるうちに赤くなっていく。
『もちろんわかってます…、本郷さんみたいな素敵な人にきっと俺は釣り合わないって』
「そんなことない」
思わず制したその言葉に、彼がこちらを見る。
「それに今は付き合ってる人もいない。
けど…、忘れられない人がいる」
彼は再び目を伏せた。
忘れられない人。
嘘ではないけれど、これが未練なのかどうかもわからない。