COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―

自動扉をくぐると、大きなロビーが目の前に広がった。

ガラス張りになった壁面。
天井は高く、突き抜けるような開放感があった。

「うっわー…さすが大企業…」

その圧巻の風景に、思わず独り言を呟いた。


来客用のフロントで受付を済ませると、
エレベーターに乗り“25”のボタンを押す。

エレベーターを降りて、高級感のある廊下を歩いていく。
部屋を間違えないよう、扉の横に掲げられている銀色のプレートをひとつひとつ確かめながら歩を進めた。

「あ、」

シルバープレートをもう一度確認する。
本日の配達先一件目。

ふうとひつと息を吐くと、気合を入れ直した。


コンコンコン。

扉をノックすると、程なくして一人の女性が顔を出した。

受注の際にお店へ来てくれていたので、その顔には見覚えがあった。
部屋を間違えていなかったことにほっと胸をなでおろす。

その女性に(うなが)されるまま、室内へ足を踏み入れた。

「こんにちは!お弁当の配達に来ました!」

皆の視線がこちらへ集まる。
まるで時間が止まったかのように動きを止めて、こちらを見ている。
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