COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―

*

「ただいま…」

誰もいない室内へ声を掛け、右手にあるスイッチを押すと目の前がぱっと明るく照らされた。

玄関のそばにある洗面台で手を洗うと、居間へ続く扉を開いた。
居間と言っても私の部屋は1LDKなので、寝室兼という感じだけれど。

鞄をベッドの脇へ放り出すように置くと、そのままの足でベランダへ出る。

今日はよく晴れていたので、洗濯物をベランダへ出していた。
洗濯物をひとつひとつハンガーから外し、洗濯カゴへ入れていく。

水色のジャケットに手をかけると、手を止めた。


“「これももうすぐ着れなくなるなぁー!もうすぐ夏やなぁ、っと」”

能天気に笑っていた今朝の私はもうどこにもいない。

それでも、
知りたくなかったなんてそんな風には思えない。

でも何も知らずにいた私の傍ら、ずっと彼女は傷付いていたんだ。

ジャケットを手にすると、乱雑に洗濯カゴへ入れ
部屋へ足を踏み入れた。
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