COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
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「ただいま…」
誰もいない室内へ声を掛け、右手にあるスイッチを押すと目の前がぱっと明るく照らされた。
玄関のそばにある洗面台で手を洗うと、居間へ続く扉を開いた。
居間と言っても私の部屋は1LDKなので、寝室兼という感じだけれど。
鞄をベッドの脇へ放り出すように置くと、そのままの足でベランダへ出る。
今日はよく晴れていたので、洗濯物をベランダへ出していた。
洗濯物をひとつひとつハンガーから外し、洗濯カゴへ入れていく。
水色のジャケットに手をかけると、手を止めた。
“「これももうすぐ着れなくなるなぁー!もうすぐ夏やなぁ、っと」”
能天気に笑っていた今朝の私はもうどこにもいない。
それでも、
知りたくなかったなんてそんな風には思えない。
でも何も知らずにいた私の傍ら、ずっと彼女は傷付いていたんだ。
ジャケットを手にすると、乱雑に洗濯カゴへ入れ
部屋へ足を踏み入れた。