COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
CAFE LATTE
*CAFE LATTE 《花緒》
『花緒っ!おはよう!』
駅の改札を抜けると、私の名を呼ぶ声と共に肩をぽんっと叩かれた。
「昭香さん、おはようございます」
挨拶をして、並んで歩き始める。
昭香さんとは駅は違えど乗る電車が同じなので、こうして毎朝改札で合流するのが日課だ。
ふと昭香さんを見る。
ベージュのリボンタイのニットに、
ブラウンのひざ丈のタイトスカートのワントーンコーディネート。
センターパートで分けたロングヘアは綺麗に巻かれている。
…美人だからこそできる格好よね。
現に行きかう人は昭香を振り返る。
昭香さんは会社でも男性社員の憧れの的だ。
男性に限らず、女性社員でもそのあまりの美貌にファンが多い。
確かに、その辺の女優よりもよっぽど美人だと思う。
けれどたまに、昭香さんが羨ましくて堪らなくなる。
美人なのに嫌味がない性格の良さ、ハッキリと自分の意見を言う強さ。
素直で純粋で。
そんな彼女を嫌いな人なんて、いるのだろうか。
ふと、脳裏に優しい笑顔が浮かぶ。
そう、きっとあの人も。
『あれ?それ何?』
昭香さんの声で我に返る。
その視線は私が手に持つ水色の紙袋に注がれていた。
「15時のおやつに。今日の朝活はお菓子作り」
そう言いながら紙袋を掲げると、
ようやるわ、と昭香さんは肩をすくめた。
『美味しいって言ってくれるといいね、ふ』
「ちょっと昭香さん!最寄り駅ですから!」
言葉を遮り、シッと指を口につける。
『ごめんごめん!』
あははっと笑った笑顔が綺麗で見惚れる。