COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
視線を戻すと、道路向かいのビルの一階に
そのお店の入り口はあった。
木製の扉にはめ込まれたガラスには“Amber”とだけ書かれている。
駅前だというのにあまり主張のないひっそりとしていて、かつ厳かなその佇まい。
それでも地味だという事はなく、駅前の煌びやかな街並みに負けず劣らず雰囲気を醸し出している。
なんといってもこのお店はカフェ業態には珍しく、個室があるということだ。
個室と言っても扉があるタイプのものではなく、空間が仕切られている所謂、半個室タイプだけれど。
扉を開くと、外とは打って変って薄暗い空間が広がる。
テーブル席のそばの柱、カウンターの上、店にはいくつものランタンが灯っている。
照明が落とされた店内は、窓から差し込む優しい日光とランタンに彩られていてまさに別世界だ。
『いらっしゃいませ。お好きなお席にどうぞ』
カウンターの中にいた、恐らく店主であろう中年の男性がゆったりとした口調で言った。
「あの、予約している中島と申しますが…」
『中島様ですね。お連れの方、先程ご案内致しました。
こちらへどうぞ』
店主の背中を追い、店の奥へ向かい突き当りを曲がると、
ちょうどカウンターの後ろに回り込むようにその小さな部屋はあった。