COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
彼の邪魔をしないように後ろから忍び寄ると、その手元を覗き込む。
お味噌汁だろうか。
小ぶりな雪平鍋から出汁の良い香りが漂う。
『あれ、起きたんですか?』
「私も手伝うね」
目を丸くした彼に微笑みかけると、水道をひねり、流水に手をさらした。
濡れた手を拭いていると、心配そうな彼の視線に気付く。
「やっと、なの。
やっとここから基と一緒に歩いていけるって思ったらね、色んな事を二人でしたくなったの」
「だから、手伝わせて」
『…そうだね』
こちらを見つめる彼の瞳が、一瞬揺れたような気がした。
彼は優しく微笑むと、再びその視線を手元の鍋に戻した。