COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―

メッセージには待ち合わせ場所と時間が書いてあった。
17時に、うづき坂駅の噴水の前。

いつか皆でパン屋へ行った時も待ち合わせをした場所。


あの時の有松さんの顔、超怖かったな。
でも、今思えばただ照れてただけだってわかるんだけど。

彼の不機嫌そうにしかめた顔を思い出すと、思わず顔が(ほころ)ぶ。
あの頃にはまだ知らなかった彼の顔を、沢山見てきた。

水槽を眺める彼の横顔。
耳を真っ赤にして俯く姿。

全然らしくない、優しい笑顔。


彼の笑顔、仕草、声。
そのひとつひとつを思い出す度に、沢山の思い出が溢れ出していく。

とびきり不器用で不思議なアプローチも、あの仏頂面も。

いざ恋に落ちてみれば、私も単純なものだ。
一般的に見れば欠点と取れるところさえも、彼の要素なのだと思えば愛おしく思う。

「早く…、会いたいなぁ…」

再び窓の外に視線を戻すと、ポツリと呟いた。
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