COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―

隣に座る彼を見る。

二人の間を優しく通り抜ける風が、本当に映画の中の世界へ連れて行ってくれそうな、そんな気がした。

『ん、そうだな。

…綺麗だな』

彼はこちらにちらりと視線をやると、そのまま呟くように言った。

…なんで、こっちを見るの!!!
景色の話です!!!

これじゃあまるで…私の事を…。
頭の中で、もう一人の私が煩くのた打ち回るほどに、どんどん心はざわついていく。

熱くなった顔を見られまいと、思わず立ち上がる。

「も、もしかして、もう知ってました!?

ここの景色がこんなに綺麗なこと!!」


『あー…いや、…うん』

そう突然言葉を濁した彼の方を振り向く。

きっと知っていたんだ、彼は。
いつだってそう。私が楽しめるようにこうやって先回りをしてる。

目を伏せたまま顔をしかめる彼。

その表情の意味も。
言わなくても、私には全部わかる。


「有松さん、私…」
< 362 / 449 >

この作品をシェア

pagetop