COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
隣に座る彼を見る。
二人の間を優しく通り抜ける風が、本当に映画の中の世界へ連れて行ってくれそうな、そんな気がした。
『ん、そうだな。
…綺麗だな』
彼はこちらにちらりと視線をやると、そのまま呟くように言った。
…なんで、こっちを見るの!!!
景色の話です!!!
これじゃあまるで…私の事を…。
頭の中で、もう一人の私が煩くのた打ち回るほどに、どんどん心はざわついていく。
熱くなった顔を見られまいと、思わず立ち上がる。
「も、もしかして、もう知ってました!?
ここの景色がこんなに綺麗なこと!!」
『あー…いや、…うん』
そう突然言葉を濁した彼の方を振り向く。
きっと知っていたんだ、彼は。
いつだってそう。私が楽しめるようにこうやって先回りをしてる。
目を伏せたまま顔をしかめる彼。
その表情の意味も。
言わなくても、私には全部わかる。
「有松さん、私…」