COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―

『…俺だけだと思ってた。

こんなに余裕がないのは』

「え?」

彼の言葉の真意が読めずに聞き返すと、彼は言葉を探すように視線を泳がせた。

『…今日だって、実は緊張してた。
お前がゲームしてるの見たら、やっぱり俺だけかって』

「あれは、私も緊張してて…紛らわそうと…」

彼は私の言葉に、そうか、と一言言うと
眉を下げて微笑んだ。

束の間、訪れた静寂が握られた右手の熱さを際立たせていく。


『日比野』

静かに私の名を呼ぶ声に顔を上げると、彼の真剣な瞳が私を捕らえた。
< 364 / 449 >

この作品をシェア

pagetop