COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―

そう言いかけた時、不意に頬に冷たいものが落ちた。
その感触に、思わず頬を手で触わる。

「え、雨?」

そう呟いて空を仰いだ瞬間、ぱたぱたと生地を濡らす忙しない音と共に
肌に触れる冷たい感覚が身体中を包んでいく。

『日比野、こっち』

まるでスコールのように突然降り出した強い雨の中、彼に手を引かれるまま早足で歩き出す。
改札の前まで戻ると、繋いでいた手が自然に解けた。

「天気予報、晴れでしたよね!?」

隣に立つ彼を見上げると、濡れた前髪の先に雫が伝っている。
鞄の中へ手を入れ、タオルハンカチを取り出すと彼に差し出した。

「はい、これ!」

『…いや、お前が使え』

彼はそれを一瞥(いちべつ)してそう呟くと、おもむろに前髪をぐしゃぐしゃと掻きむしるように水滴を払った。
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