COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―

身体を這うように滴る生温い雨の雫に
全身が包まれると、握った彼の手の感触をよりはっきりと感じた。

けれどいざ走り出してしまえば、雨に濡れてしまう事も意外と吹っ切れるものだ。

どこか子供の頃に経験した事がある、
心が騒めくようなワクワク感に似た感情が身体中を満たしていくような気がした。


マンションの玄関に到着すると、見事な濡れっぷりに思わず声を上げる。

「っわあー!こんな雨の中走ったの、久しぶりです!」

『…何で嬉しそうなんだよお前』

彼はおでこに張り付いた前髪を、(わずら)わしそうに払いながらこちらを見る。

「なんとなく、子供の頃を思い出して

楽しくなってきちゃいました!」

『ああ…、何となくわかる気がする』

「でしょ!?」

共感を得られた事が嬉しくて、思わず詰め寄ると
少しだけ驚いた顔をした彼と至近距離で目が合う。
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