COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
『浄心さん、』
気付くと隣に室長が並んでいた。
『わかっていると思うけど中島さん、悪気はないんだよ』
「…大丈夫です、わかってます」
やっぱり。
こうしてフォローにやってくるのはいつだって彼だ。
昭香さんのことをよく知る室長だから、きっと彼女が誤解されるのがいたたまれないのだろう。
再び湧き上がる黒い感情に、また胸がチクリと痛む。
今、室長がどんな表情をしているか知ってます。
それが私には向けられたものじゃないことも。
彼を見上げると、優しい笑顔が私を見下ろした。
『あと、僕は』
『合コンには行って欲しくないと思ってます』
彼の口から発せられた予想外のその言葉は、私の体の中を駆け巡るように支配した。
いくらでも答えを出せそうなその言葉は、男としてのものなのか、それとも。
“上司”として私を気遣って、ですか?
そう言いかけた言葉も。
時が止まっているような、風のない春の夜。
こんな夜はすべての言葉を飲み込もう。
見慣れた景色が、いつもより輝いて見える。
そんな今だけは幸せな想像に浸りたい。
NEXT
*BLACK COFFEE