COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
無地のレースカーテンの向こう側には2坪くらいの広さの庭が見える。
それを眺めながら、張り替えたばかりの畳に胡坐をかくように腰を下ろした。
築45年の二階建てアパート。
会社からもとても遠い。
けれどそれでもこの家にわざわざ決めたのは
この縁側とお世辞にも賑わっているとは言えない、穏やかで地味な街並みが決め手だった。
子供の頃、夏休みになると必ず訪れていた母方のおばあちゃんの家にあった縁側が大好きだった。
縁側に座って麦茶を飲んだり、スイカを食べたり花火をしたり。
私には都会の喧騒よりも、この静かで小さな縁側が何より落ち着く場所で自分らしく居られる場所。
雨に濡れた緑の香りを胸いっぱいに吸い込む。
身体中の空気が一斉に入れ替わっていくようで気持ちが良い。