COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
RAINY DAY
-PROLOGUE-
*RAINY DAY
PROLOGUE 《優香》
毎朝恒例の、コーヒー店での雑談タイム。
けれどいつもと場所が違う。
窓の外、行きかう人たちがさしている色とりどり傘を眺めながらコーヒーを口へ運ぶ。
雨の日の集合場所は最寄り駅前のコーヒー店。
内装はクラシックな昔ながらのお店だが、
最近のチェーン店にはない何とも言えない味がある。
そしてなによりコーヒーが美味しい。
「…あ、そういえば、新しいお弁当屋さん。
あたしの家の近くでした」
先日偶然にそのお店に立ち寄ったことを話した。
『あれ?言ってなかったでしたっけ?
優香先輩の家の近くのお店なんですよぉ!』
理央が目を丸くして言う。
『私たちはグルメサイトで見つけたんですよー!
偶然立ち寄ったなんてすごいですねぇ!
だってあのお店の場所、ちょっとわかりにくいじゃないですかぁ?』
ちょっと運命的!と理央は付け加えた。
捲し立てる勢いの理央に圧倒されていると、
『理央、優香引いちゃってるから!
運命的って、乙女め!』
昭香先輩がケタケタと笑いながら理央に軽くチョップする。
運命的…かぁ。
私はそんな風に物事を考えることができない。
いや、昔はできていたのかもしれない。
大人になるにつれ、いつからか出来なくなった。
運命的だとはしゃぐ理央は、私から見ると眩しく映る。
『でも人って不思議よね。
出会うべくして出会っていると感じることはあるかも』
花緒先輩がふわっと笑うと、昭香先輩がすぐさま反応する。
『ここにもいた!乙女が!』
そんなやりとりを眺めながら、ふとあの手の感触を思い出す。