COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
その時、まるでそれを待っていたかのように店の扉が開くと
エプロン姿の春田くんが嬉しそうに顔を出した。

『本郷さん!

おかえりなさい!』

その淀みのない笑顔に、悪いことをしたわけではないのに同時に芽生えた小さな罪悪感。

私は彼と歩いていく事を選んだんだ。
彼を不安にさせるわけにはいかない。

そう自分に言い聞かせると、彼に微笑み返す。

「…ただいま」

彼は私を店の中へと招き入れると、店の前の通りをきょろきょろと見回した後こちらを振り返った。

『今日はもう閉店です。

雨と給料日前のおかげで客足もさっぱりなので』

言葉とは裏腹に彼はケロッとした顔で笑う。
< 417 / 449 >

この作品をシェア

pagetop