COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
「そうなんだ、大変だね」
『まぁ、そんな日もありますから』
シャッターを手慣れた手つきで下ろしていく彼の背中を見つめた。
その余裕さえ感じる口調からはきっと想像も出来ない程の信念を彼は持っているのだろう。
この若さで自分の店を持つ事も、経営していく事も並大抵の事ではない。
『あ、それで今日なんですけど…
余っちゃいそうだったので、一緒にご飯でもどうかなって』
彼は扉の施錠をしながらガラスの中の料理へ視線を送ると、こちらを振り返る。
『あ、もちろんお代は結構ですので』
「そういうわけにはいかないよ」
『本当に大丈夫ですから』
そう言って優しく笑う彼の提案に、私はなかなか引き下がれない。
そうこうしているうちに彼とのやり取りは、言葉の応酬のようになっていく。