COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
キス、されるのかな。
そう思った時、“その顔”が再び脳裏に過った。
反射的に握られた手がぴくりと動く。
彼は繋がれた手に目線を落とすと、その手をじっと見つめた。
この動揺を悟られまいと奥歯をぐっと噛み締めた
次の瞬間、繋がれた手が優しい力で引かれた。
私の身体は方向を変え、彼に手を引かれる格好で料理の並ぶガラスケースへ向けられる。
『お腹空きましたね!
今日は、何食べたいですか?』
「…え?」
『おすすめはカノムパンナークンですかね!
食べる前にオーブンで焼き直すのでサクサクで美味しいですよ』
先程までの緊張感が嘘かのように
彼はいつもの優しい笑顔で、ガラスケースの中に並べられた料理の説明を次々に始めた。