COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
“『このウサギ。日比野に似てる』”
そう言って笑う彼の顔を思い出すと、また強く胸を掴まれるような感覚に襲われた。
どうして私が二人のデートの付き添いなんてしなきゃいけないのよ。
本当は、こんなに晴れてほしくなかった。
雨でも降っちゃえばよかったのに。
何なら台風でもきて中止になればいいとさえ思っていた。
『昭香さん』
その声にはっと我に返る。
「…ん!?
どしたー?」
咄嗟に笑顔を張り付ける。
『ちょっと寄り道しません?』
そう言って彼は微笑んだ。
「あーうん、いいよ!」
今日は特にこの後予定もない。
でも、何故か今日は一人になりたくない。
誰でもいいから一緒にいて欲しいような、そんなどこか人肌恋しいような変な気分だった。