COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
-JULIET-
駅前通りを抜けると、人通りも少し落ち着いてくる。
手を離すタイミングを完全に失ったことに気付いたが、何となく離したくない気がする。
やっぱり今日の私はどこかおかしい。
そんなことを考えていると、彼が歩を緩めた。
『あそこです。
ほら、あのグレーのお店』
彼は前に視線を向けたまま、私の目線に合わせるように
顔を近付けてそのお店を指差した。
そのお店は灰色のレンガの壁面に白色の文字で、
”chocolaterie JULIET”
と書いてあった。