COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
彼の腕が、私の背中に優しく回される。
振りほどくことなんて簡単なのに。
その甘い誘惑に、
先程までストップをかけていた理性はいとも簡単に溶けていった。
「徳重くんは…いいの?」
『ん…?
…いいよ、昭香さん可愛いし』
そう言った彼の表情は見えない。
そっと目を閉じて
私を抱きしめる腕に、勇太を重ねた。
するとまた、ぎゅっと胸を掴まれる感覚。
けれどさっきとは違う、切なくて甘い痛み。
…夢でもいい。
嘘でも、妄想でもいい。
安っぽい事していることも充分わかっている。
『向こうの部屋、行こ』
「…うん」
けれど私を甘やかす声に、もう抗うことができないくらい
その痛みに溺れ始めていた。