気づけば彼らの幸せはそこにあった
「うん、こんな感じかな」


「見てもいいかな?」


「もちろん、長時間ありがとうございます」



俺の返事に秋奈さんは、キャンバスへと回り込んでくる。



「わぁ.......やっぱり素敵な絵を描くのね」


「そう言ってもらえると嬉しいです」


「うん、あなたに自分を書いてもらえてよかった。ありがとう」


「いや、こちらこそ。これ、コンクールに出すんで.......終わったら差し上げたいんですが、連絡先聞いてもいいですか?」



俺の質問に「えーっと」と言葉を濁す秋奈さん。



「あ、迷惑ならいいんです。ただ、お礼がしたかっただけなので」


「迷惑とかじゃないの。ただ、いまはスマホを持ってきてなくて.......わからないの」


「そういうことなら、俺のを書いておくので連絡ください」



近くにあった紙に番号を書いて渡す。



「ありがとう、連絡するね。今日は用事があるから、ここで」


「ありがとうございました。また」



最後に握手をして、彼女の相変わらず冷たい手を握る。



「きっと、コンクールいい成績とれるよ」


「だといいですけど。結果を待つのみですね」



秋奈さんにそう言われると、そんな気がしてしまうのが不思議だ。

今日、であったばかりなのに。

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