気づけば彼らの幸せはそこにあった
……………………………………………



「賢人!おい、これお前だろ!」


「桜井さん。どーしたんすか?」



桜井さんは、俺らが入学する前に美術部で部長をしていたOB。
息を切らしているもんだから、びっくりしてしまう。


「や、お前の絵がコンクールで金賞だぞ!ほら」


「.......あ」



桜井さんが見せてきた紙には、秋奈さんを描いたあの絵が載っていた。


桜井さんは、俺が出したコンクールの主催会社で働いていて、一足先に結果が分かってしまっていても経ってもいられなかったのだろう。



「なぁ、これって.......秋奈じゃない?」


「え?桜井さん、秋奈さんを知ってるんですか?」



秋奈さんとはあの絵を描いた半年前以来会えずじまいだった。
結局、連絡もくることはなくて「迷惑じゃない」というのは社交辞令だったと気づいて、バカみたいに連絡先を渡したことを後悔したりしていた。



「知ってるもなにも、同級生で同じ美術部だったんだよ」


「え.......?同級生?」



あの日、うちの学校の制服をきてあの階にいた秋奈さんが桜井さんと同級生なわけがない。

でも、桜井さんがそんな勘違いをするわけもないから、俺が嘘をつかれていたということになる。

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