気づけば彼らの幸せはそこにあった
「言葉にならないじゃないですか!最初から説明してください!」



たしかにあの時秋奈さんはあそこにいた。
俺の絵のモデルをしてくれた。



「ほら、お前オープンキャンパスで来たろ。美術部」


「行きましたね」



そこで桜井さんに初めて会ったのを覚えてる。



「俺だけじゃなくて、秋奈もいたんだよ。で、一緒にひとつの絵を完成させてた」


「あ!あの時のお姉さん!」


「そ。お前は秋奈のこと、お姉さんってずっと呼んでたよな。秋奈は、後輩と上手くやれるタイプじゃなかったからな、お前と一緒に絵を描けたこと嬉しかったみたいだぞ」


「マジっすか.......」



オープンキャンパスの時に1人のお姉さんに担当してもらって、一緒に絵を描いた記憶があって、俺は美術部にはいった。
そのときがやたら楽しかったんだよな。



「だから、お前が入学してきたら頻繁に顔出すんだーって楽しみにしてたんだけどな.......交通事故で一命は取り留めたけど、ずっと意識は戻ってないんだ」



俺がここで絵を描き続けたあいだ、あの時のお姉さんは、意識がなかっただなんて.......信じられないけど、信じるしかなさそうだ。

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