気づけば彼らの幸せはそこにあった
「だから、あの時手が冷たかったんですね.......」



桜井さんに連れられてやってきた、秋奈さんの病室。

ベッドに横たわっている秋奈さんの手を握ると、あの日と同じようなひんやりとした感触。



「事故にあったとき、俺たまたま近くにいて、一緒に救急車乗ったんだよ」


「はい」


「救急車の中で、意識がなくなる前に言ったのが『あたしの代わりにあの子の様子を見に行ってね』だった」


「.......なんで、最後に俺」



俺は彼女の中でそんなに大きな存在になれていたのだろうか。
そんな大それた人間でもないのに。



「秋奈に言われたから、部活よく顔だして、お前にアドバイスよくして.......1番可愛がったと思うぜ?」


「たしかに、桜井さんには本当にお世話になりました」



桜井さんがOBの割には頻繁に来てくれてて、しかも桜井さんから貰うアドバイスはどれも的確で。



「お前がメキメキ上達してくの、いつもここで秋奈に教えてた」


「そうだったんすか.......」


「秋奈.......いるぞ。お前が大好きだった賢人がここに。だからさ、早く目を覚ませよ」



コツンと桜井さんが秋奈さんのおでこに拳を乗せる。

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