彼はネガティブ妄想チェリーボーイ
ベンチに戻る。

「すみませんでした。」

河合先生に一言言って座る。
少し帽子を深めに被って、視線を落とす。

その時、グイと帽子のつばを顎まで落とされた。

荒木と後藤だ。

「点奪ってくるから安心しろ。」
「まだまだこれからだよ。」

優しい。

肩に重くポンポンと手を乗せてきた。

頭切り替えなきゃ。

その時、暗い視界の中で目に入るものがあった。
帽子を脱ぐ。

ほとんど消えかかってる「ガンバレ」の文字。

沙和だ。

多分あいつは野球なんて全然興味がない。
それでも試合結果は気にしてくれてるはずだ。
多分。

汗まみれの俺の頭をゴシャゴシャに荒木が撫でる。

「なんだよ。」
「いや、点入った時のお前の顔・・・間抜けだったなあと思って。」

荒木が笑って顔真似する。

「そんなゴリラじゃねえわ。」
「いや、気の抜けたゴリラだったよ。」

後藤が立ち上がる。

「行ってくるわ。」
「おーう。」

もう打ってくれるみんなにお願いするしかない。

1点以上多く取れば、うちの勝ちだ。

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