彼はネガティブ妄想チェリーボーイ
「彼女。」

自分で言ったくせに反応が怖くて、すぐに米に逃げた。

「ん?」

ほらきた。
半ば怒ってる。
真顔だよ、真顔。
俺、負けるな。

「彼女。」

言うだけ言って、また米に逃げる俺。

「どういうこと?何が?」

綺麗な顔なのに、眉間にシワが寄る。
言い方、なんで怒ってるんだよ。
怖いよ。

「俺の彼女。」

3度目。

「え、付き合うの?」

嫌そうに聞いてきた・・・。

「嫌ならフリでいいよ。」
「え・・・。」

うわ、嫌そう。
すげえ嫌そう。

これ、振られるな?
今告白した言い訳をするしかない。
クッション材料ってやつ。

「告白されたんだけど、振る理由見つからなくてさ。」

俺の急な一言に、沙和の眉間のシワが消えた。

「初めて聞いた、誰から?」
「言わない。」
「なんで、教えてよ。」

グイと身を乗り出してきた。

まずい、俺の告白話に興味津々だ。
矢野美織って言ったら、絶対勝手に盛り上がるパターンだ。
「いいじゃん、いいじゃん、付き合っちゃいなよ。」って言うのが見え見えなんだよ、くそう。

「いや、彼女のプライバシーだろうが。」

ナイス、俺。
見事な俺の切り返しに「まあ、そうだね。」と沙和のテンションが一気に下がっていったようだ。

「今日告白されて、別にいいんだけど、別にいいのかな?俺、この子のこと好きになれんのかな?と思って。」

何言ってんだ、俺。

「振ればいいじゃん。」

ですよねー。
そうなるよねー。

「断ったら『友達からでいいから。』って言われた。」

仕方なくネギマを頬張る。
うっま。
タレがうまいんだよな、ここ。

・・・

ん?
あれ?
会話止まった?

沙和はまた宿題に戻ってる。
すっげードライな女。

「振ればいいじゃん」で沙和の中で解決したってことか。

まあこういうとこなんだよなー、好きなとこ。

しかしまずい。
俺の勇気が、俺の今までの人生をかけた勇気が、サラッと水に流される。

< 6 / 96 >

この作品をシェア

pagetop