彼はネガティブ妄想チェリーボーイ
ショッキングな出来事
あっという間に20日になった。

これまで、部活と、ちょっとした模試と、お盆の帰省しかしていない。
薄っぺらい高2の夏休み。
唯一今日だけがカレンダーの中で光り輝いているようだった。

朝はいつも通り6時に起きた。
10時に沙和ん家に行く予定なのに、めちゃくちゃ早い。

予定の映画は13時半。
席確保してから少し早めにお昼食べよう。
うん、それがいい。

映画は、ラストに大どんでん返しが待ち受けているという噂の話題作。
絶対面白いに違いない。

俺は意気揚々とシャワーを浴びようとしていたその時だった。
階段下にある電話が家中に響き渡る音量で鳴った。

母さんがすぐに出る。
慣れた口調から、親戚の誰かからだろうと予想がつく。

と、すぐに声色が変わった。

「じゃあ、すぐ行きますので。ええ、ええ・・・」

そう言いながら、脱衣所に入ろうとしていた俺にジェスチャーで「何か書くもの持ってきて」と訴えてきた。

急いでチラシとペンを渡す。

そこに母さんが急いだようにメモをする。

聞いたことのない病院名。

嫌な予感がする。

母さんの手から静かに受話器が置かれた。

「何だって?」

俺が聞くと、母さんが静かにため息を漏らして口を開いた。

「おばあちゃん、今朝、階段から落ちて骨折したって。」

まさしくガーンという音が脳内で鳴り響くような気がした。
ダブルで痛い。
頭の中が真っ白に、というか真っ暗になってしまった。

「どうするの。」

情けないことに、俺の口からはそんな言葉だけが出てきた。

「とりあえず急いで入院先の病院行くわ。お義兄さんがいてくれて良かったけど・・・。」

母さんは呟くように言って店の方で作業をしてた父さんのところへ去っていった。

俺、唖然。

ん?
じゃあ、今日の映画デート、行けないってことじゃね?

もちろんばあちゃんの骨折はショックだ。

でもデート行けないことも大きい。

真っ暗な気持ちのまま、沙和に連絡する。

「ごめん、ばあちゃん今朝階段から落ちて骨折したらしくて、急いで病院行くことになった。」

文章を打って送信。
「ごめんなさい」と犬が謝るスタンプも送信。

はあ。

俺はフラフラと脱衣所に入った。


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