彼はネガティブ妄想チェリーボーイ
またかよ。
話題が戻ってうんざりする。

周りの視線が俺に集まる。

「してねえよ。」

俺の小さな声が不思議なほどに響いた。

「まだだったんだ。」
「まじか。」
「夏休み終わるぞ。」

みんなそれぞれが呟くようにして言う。

「夏休み中何やってたんだよ。」
「毎日野球してただろうが。」

荒木は、まるで洋画に出てくる人間が「オーマイガー」と呟くように首を振る。

「もしかして部活終わったら家帰って一旦寝て飯食ってまた寝るパターン?」
「寝る前にちゃんと宿題してるよ。」

俺が答えると、松崎が「そこじゃねえ。」と突っ込んできた。
お前も童貞だろうが。

「もしかして手を出すのが怖いとか?」

荒木の指摘に、「ああ、そういうこと?」と五反田がのっかる。

「経験豊富な前山さんから評価されんの怖いんだ?」

いや、沙和は経験豊富じゃないと思う。

そう思うんだけど、田尻との一件もあったし、俺が知らないだけか・・・?

黙り込む俺。

「そうなのか。」

荒木が同情するように言う。

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