彼はネガティブ妄想チェリーボーイ
どうしよう。

どうしよう、俺!

今までより少し長めにしても、沙和も応えてくれてる気がする。

も、もしかして、いけるんじゃないか?
いける、いける、いけるぞ!

もしや今日いけちゃうのか?俺!

俺は沙和の肩に手を当ててベッドに押し倒す。

よくドラマで見る構図だ。
そこに俺と沙和。

沙和の腰にまたがる。

あ、これはいける。
いける気がする。

またキスをする。

いける、いけそうだ。

でもなぜか突然、俺の中でためらう気持ちが出てきた。

さっきからなんとなく沙和にリードされてる感じがするんだけど・・・
やっぱり沙和・・・
経験豊富なんじゃ・・・

ダメだ、ダメだダメだダメだ。

俺が脳内から押し出そうとしても、五反田が顔をひょっこり覗かせる。

「経験豊富な前山さんから評価されるの怖いんだ?」

評価される・・・?
別に、別に怖くねえよ。
怖くないけど・・・

脳内沙和が話し出す。

「田尻くんの方が良かった。」
「やっぱり童貞は童貞だね。」
「AVの見過ぎ。」
「全然気持ちよくない。」

俺は脳内でブンブン頭を振る。

いや、沙和はそんなこと言わない。
沙和はそんなこと言わないはずだ。

言わないはずなんだけど、なんか今日はダメだ。
頭がそっちの方にいってしまった。

そっと唇を離して聞いた。

「沙和さ、誰かと付き合ってたことあった?」

俺の目を見て固まる沙和。
ちょっとの沈黙。

ああ、どうしよう。

聞いたこと自体がバカだ・・・
過去のこと聞いてもどうにもなんないのに。

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