素直になれない夏の終わり
「あっ……!」
手元から離れていく雑誌を追いかけるように顔を上げると、ふてくされたような表情の津田と目が合った。
「返して」
夏歩も負けじとその顔を睨んで、開いたまま津田が高く掲げている雑誌に手を伸ばす。指先がかすりもしないのが腹立たしい。
「俺はお腹が空いた。なっちゃんもきっと空いてるはず。だからご飯を食べよう」
「津田くん一人で食べたらいいでしょ。て言うか、休みの日まで来なくていいって言ったよね」
来なくていいと言うより、来るなとはっきり言ったはずである。休みの日まで朝早くに起きたくないからと。
そうしたらなんと津田は、お昼を過ぎた頃にやって来た。
それも、計ったように夏歩が起きだしたタイミングで、インターホンも鳴らさず、勝手知ったるとばかりにずかずかと。
「その“来なくていい”に対して、俺は“うん、わかった”とは言ってないよ。それに、休みの日こそ一緒にいたいに決まってるでしょ」
「私の都合は無視か」
「何か予定あるのって聞いた時、昼まで寝るってなっちゃん言ってたでしょ。だからちゃんと、その用事が終了した頃合を見計らって来たんだよ」