素直になれない夏の終わり
「なに?なっちゃん。惚れ直した?」
「そもそも惚れてない」
ふいっと津田の顔から視線を外して、夏歩は前を向いて歩く。
「常に見下ろされてるってのが嫌だから、津田くんの身長が今の半分に縮めばいいと思ってたの」
「なっちゃん、高校の時もそんな呪い俺にかけてたよね」
そう言って、津田はクスッと笑った。
「俺的には、この身長差がベストだと思うけどな。ほら、丁度いい位置になっちゃんの頭が来るから、撫でやすい」
「気安く撫でるな!」
ぽんっと頭に置かれた手を、夏歩は煩わしそうに払いのける。
馴れ馴れしく頭に置かれるその手は、高校の時から変わらない。
「ねえ、なっちゃん。手、繋ごうか」
「なんでよ!て言うか、今の流れでなんでそうなる」
また知らぬ間に手を取られては適わないから、夏歩は両手を上着のポケットに押し込んで防御の姿勢をとる。