素直になれない夏の終わり
「まあ、流行りものなんて言ったけど、都会の方じゃあ知らない人はいないくらいの有名店らしいから、今この店が流行ってるのはこの辺の地域だけだと思うけど」
ふーん、と相槌を打ってしばし間を開けて、夏歩は「ん?」と首を傾げる。
「そのお店、こっちの方にはまだ出店してないって…………あれ、じゃあそれ、どこで買ったの?」
夏歩の問いに、美織は呆れたような驚いたような顔で答えた。
「なに、知らなかったの?駅中に最近オープンしたのよ。お店のことは知ってるみたいだったから、てっきりこれも知ってると思ってたけど」
「……いや、初耳」
もしも知っていたら、記事を斜め読みで済ませたりはしなかった。
行ける範囲には出店していなかった店だからこそ、斜め読みしたのだから。
「先週……だったかな、オープンしたの。一週間もしたら落ち着くだろうと踏んだんだけど、甘かったわね。念の為いつもより早く家を出て正解だった」
「……そんなに混んでたの?」
「夏歩ならげんなりして諦める程度には並んでたかな」